‘会席のお献立’
三月の能書き
天醐の三月
厳しい寒さも少しずつ和らいで春の気配を感じられる三月。
温かな日差しを楽しみながら春の食材の料理も心待ちになる時期です。
今月はお花見の季節でもあり、持ち出しのお弁当のイメージも
少し加えてのお献立です。
この時期に不思議と恋しくなるのが食材の苦みの味。私達、日本料理の
ことわざのように「春、苦み 夏は酢の物 秋、辛み 冬は脂もの・・・」と。
古来より四季のある日本料理には季節の食材と共に、身体が必要と
している食材、栄養、或いは、食感・香り・色合い、四季を感じさせて
くれる盛り付け。これほどにそれぞれの季節を楽しませてくれる
お料理が海外にあるのでしょうか? 私達は恵まれた四季の
環境の中で自然の美しさと大切さをお料理に乗せてきた歴史があり
それは世界の遺産としても認められようとしています。
大切にしていきたい料理。
当店は生粋の日本料理ではありませんが、ベースは日本を
忘れない創作料理です。私自身、25年以上日本料理店、料亭等で
仕事をして参りましたが、少々幅を広げた料理を提供し、
遊び心を加えてお客様に楽しんで頂きたく今の天醐に至って
います。今後とも楽しんで頂く為の仕事を続けて参ります。
前置きが長くなりましたが、今月のお献立、
季節を楽しんで頂けますように。
向附 これから美味しくなる貝類。酸味との相性は抜群です。
ゆえにキウイ、グレープフルーツなどは好相性!
柔らかい味の黄味酢でお召し上がりを。赤キャベツ
の色を生かしたゼリー寄せは食感も上々です。
椀盛 蛤の旨みを利かせたお出汁の海老しんじょ椀です。
山椒の芽と若布の香りが食欲をそそります。なぜか、蛤と若芽を
一年の中で一番美味しく感じるのは私だけ?
造り 先月に引き続き、胡麻をたっぷり利かせたドレッシングでの
サラダ仕立てです。今月もブリが本命ですが・・屋久島初鰹も期待の花。
または・・表浜の寒ボラだったり・・と良質な魚が入荷する事が
楽しみこの上なしです。
八寸 手籠盛の八寸。少しづつ春を思わせる盛りつけになりますね。
勿論、八寸ですから、野の物・海の物と色々と少量盛り合わせに。
一献いかがですか?
煮物 ロール白菜です。中身の野菜は玉葱、人参、牛蒡。付け合わせには
野菜たっぷりの飛竜頭。名残りの玉蕪・・春大根への変わり目です。
緑色の餡はホウレン草をミキサーにかけてお餅を溶かしたお出汁と合わせ、
クレソンを付け合わせました。
水物 小豆をぜんざいに仕立ててゼラチンを溶かし込みゼリーとして
その上から抹茶のムースを流し込みます。
抹茶と小豆の相性は絶対的な組み合わせですね。
野菜ソムリエ オーナーシェフ 大澤 淳
三月のお献立
今月のお献立
向附 帆立と北寄貝のフルーツサンド黄味酢掛け ミニトマト
赤キャベツの旨酢ゼリー寄せ チャービル
椀盛 海老しんじょ 蛤 花麩 木の芽 乃し餅 若布
造り 季節魚のサラダ仕立て 胡麻ドレッシング スプラウト
刻み野菜(大根、水菜、人参、赤玉葱) ピンク胡椒
八寸 ◆春野菜と京揚げの煮浸し 糸がき
◆小芋 竹の子 椎茸 ブロッコリ ◆玉葱と生ハム
◆変わり玉子焼き 生姜
◆出汁巻き えんどう豆しんじょ 海老旨煮 三色団子
鱒塩焼き 白魚しんじょ スナップ豌豆 菜の花
煮物 牛蒡と人参のミートローフ白菜巻 野菜飛竜頭
ホワイトアスパラ クレソン ほうれん草の餡
御飯 西京味噌仕立てのうずみ豆腐 芥子 小口葱
水物 小豆のゼリーと抹茶のムース 苺 ホイップ・・
薄茶
2月の能書き
天醐の二月
今月のテーマは「彩菜」です。我が当店の一番のコンセプトであります。
野菜達の美味しさ・優しさ・美しさをお客様に楽しんで頂けたらと思い
今月のお献立を考案いたしました。
最近ではスーパーの野菜売り場でも色々な新顔野菜達が並び、
高級店では、海外からの珍しい野菜も当たり前のように
店頭で見掛けます。珍しいだけではなく栄養価も高く
美味しい野菜は必然的に消費者に要望が集まります。
ただ、天醐としては、出来るだけ新鮮で美味しい物にこだわり、
出来るだけ近い産地の物をお客様に、提供するよう心掛けています。
当然ながら野菜達の収穫から調理までの時間が掛からない程、
栄養価は損失なく食事として頂ける訳です。
能書きが大きく逸れてしまいましたが、
今回は野菜達の彩りも楽しんで頂きたく調理いたしました。
向附 貝柱は旨みを逃がさないように低温で加熱し、カリフラワーは
高温スチーム短時間加熱。どちらも美味しさと栄養素を逃がさない
工夫です。お出汁に醤油と味醂で調味しゼラチン、少量の
メレンゲと生クリームでムースといたしました。
椀盛 旬の青さ海苔をお椀に使わない手はありません。
思案の末、定番のしんじょに採れたての青さ海苔をすり身に
混ぜ込みお椀に仕立て、木の芽を添え春の香りの椀。
造り 季節の魚のサラダ仕立て。基本的にはブリ、ハマチですが
入荷状態によっては変わります。野菜の刻みとお出汁のジュレを
混ぜて型で抜き魚のスライスと盛り合わせますが・・
野菜の美しさが刺身に彩りを添えます。食欲をそそります。
八寸 見ての通りのあれやこれやです。揚物、煮物、焼物・蒸物、和え物・・・。
楽しんで頂ける逸品となりますよう・・・。こちら勝手の理屈ですが・・
あれこれと種類をたくさん作るのは、ちょっと手間が掛かりますゆえ
お時間いただく場合も・・。
焼物 変わり種の焼物ですが、純和風と言えるお料理かも知れません。
お出汁と豆乳の半々に西京味噌と醤油・味醂で味付けしたものに
お餅を溶かして少量の米油を忍ばせてあります。
季節の野菜とお餅のねっとりした食感をグラタン風に仕上げました。
海老煎餅とアサヒ蟹のから揚げを添えて口当たりの違いを楽しんでください。
御飯 白雑炊にシジミの佃煮を添え、山葵と葱の香りで召し上がって頂きます。
野菜ソムリエ オーナーシェフ 大澤 淳
2月のお献立
向附 貝柱とカリフラワーのムース ビーツのゼリー
カナッペ二種 トマト 胡瓜 チーズ イクラ ・・・
椀盛 あおさのしんじょ 竹の子 花麩 木の芽 乃し餅
造り 季節魚のサラダ仕立て 胡麻ドレッシング スプラウト
刻み野菜(大根、水菜、人参、赤玉葱) ピンク胡椒
八寸 ◆玉子焼き・海老・干し柿チーズ ◆百合根茶巾
◆人参しんじょ・甘鯛柚庵 ◆玉子の変わり焼き
◆白魚ゼリー・紅白梅 ◆蓮餅揚げ・南瓜餡かけ
◆豚肉豊年蒸し・パプリカ ◆海老コロッケトマトソース
◆玉葱と生ハムの和え物
煮物 お餅のグラタン風 芽キャベツ・ペコロス・人参
一口がんも・ブロッコリ・あさひ蟹・煎餅
御飯 雑炊 蜆の佃煮 小口葱 山葵
水物 プリン 五色豆 バナナ 苺 ミント カラメル
薄茶
12月の能書き
天醐の十二月
今月のお献立のテーマは「美肌と健康」です。これからもっと厳しくなる
冬の寒さと乾燥でお肌の潤いが失われがちになりそう。外側からの
保湿に頼るだけでなく食事による内側からの保湿も大切です。
まずは健康的な食事。プラス、食事による乾燥肌の予防を
野菜ソムリエが提案します。
お肌を乾燥から守る栄養素としては、セラミド、ビタミンA、脂質、等が
効果に期待が出来るでしょう。また新陳代謝を高める唐辛子や生姜も
お料理に取り入れて美味しく内側からの保湿に役立ちそうです。
向附 セラミドを多く含むヨーグルトを、酸味を抑えた形でゼリー寄せ
として蕪や林檎その他の食材を黄身酢で味を調え、デザートの
ように仕立てました。柔らかな酸味が食欲をそそり、消化吸収、
また整腸にも良い効果があります。
椀盛 蟹の身をほぐしてしんじょう地に混ぜ込み蒸し上げます。しんじょう地
は元々、白身魚のすり身。魚のタンパク質の中にはコラーゲンの元となる
アミノ酸等を少なからず含みます。丸ごと一尾を煮魚にした時に出来る
煮凍りはゼラチン質が固まった物として知られます。コラーゲンに近い物と
考えると解り易いでしょう。
この白身魚のすり身を出汁や酒、つくね芋等でのばして玉子の素と
呼ばれる脂質を混ぜ込みまろやかさを出します。
吸い地のお出汁にはたっぷりの昆布と鰹を使用し、葛粉でとろみを
つけて、蒸して裏ごしした蕪をみぞれに見たてます。
造り 季節の刺身で刻み野菜と一緒に召し上がって頂くサラダです。
刺身の付け合わせには大根のツマや山葵が付きます。
それぞれ毒消しや消化の意味合いがあるのですが、
天醐ではツマも一緒に美味しく召し上がって頂く為にサラダにします。
八寸 懐石でも会席でも本来の八寸の意味合いはお酒のあてです。
当会席の八寸はコース料理の一つの盛り上りとして季節を彩り
風情を感じながらお酒を酌み交わす目に楽しく舌に美味しい料理です。
勿論、この中でもビタミンAやセラミドを意識した内容です。
緑黄色野菜、チーズ、卵等は身体に優しく食べやすい食材。
煮物 玉葱と豚肉の組み合わせは疲労回復や血液サラサラ効果が
期待出来、温かい鍋として食べる事で血流が良くなり隠し味の
生姜により様々な相乗効果が・・・。
いずれにしても、健康を意識したバランスの良い食事がお肌の健康をも守ります。
野菜ソムリエ オーナーシェフ 大澤 淳
12月のお献立
今月のお献立
向附 ヨーグルトカクテル 黄身酢 イクラ チャービル
蕪 林檎 完熟柿ゼリー 鮭燻製 ナタデココ
椀盛 蟹しんじょ みぞれ仕立て 柚子
造り 季節魚のサラダ仕立て 胡麻と大根のドレッシング
温度玉子 刻み野菜(大根、水菜、人参、赤玉葱)
八寸 ◆春菊と法菜の浸し 椎茸 ランプキャビア
◆がんもどきのチーズ焼き 銀杏 しめじ
・出汁巻き・むかごしんじょ・うずら卵のゼリー寄せ
・海老の旨煮・甲州焼き・土佐昆布巻き・柚子玉子
・黒豆松葉・海老団子揚げ・紅芋チップ
煮物 コラーゲン鍋 絞り生姜 一人鍋仕立て
水菜・豚バラスライス・舞茸・玉葱スライス
御飯 榎茸となめこの雑炊卵とじ 三つ葉
水物 チョコわらび餅 抹茶 黄な粉 小豆
薄茶
11月の能書き
天醐の十一月
記録的な猛暑を乗り切れたと思った途端に寒気の勢いに押されて季節の
移ろいを感じる間もなく近場の紅葉所は錦繍の気配で賑わっている様子です。
そんな秋の食材たちは美味しく栄養価も高く豊富な種類の野菜達で
市場をも賑わせます。「食欲の秋」と言われますが、最近では
食事の欧米型が進み従来の日本食とはかなり違って来ているようです。
乳製品や肉類などの動物性食品主体の食事が多く野菜の摂取量が
減っている現状です。食事の支度にかかる時間の短縮や環境により
色々な料理を提供するお店やコンビニ店の増加で便利にはなりましたが、
結果的に手間の掛る野菜の下ごしらえや料理が敬遠され勝ちのようです。
そこで今回のテーマは緑黄色野菜と食物繊維の多目な料理の
「免疫力を高める」内容です。秋から冬の緑黄色野菜の代表としては、
南瓜・春菊・ほうれん草・ブロッコリ・等々、其々の野菜達には
カロテン以外にも色々なビタミンが含まれ重要な栄養素の上、ガン予防の
影の功労者として認められています。また食物繊維の多い食材
として挙げられるのは、人参・ブロツコリ・海藻類・大豆製品等々。食物繊維の
効能は、コレステロールの抑制や血糖値の上昇を抑えたり・・と、野菜達の働き
には私達の身体に必要不可欠な事を理解して頂けたら幸いです。
今月のお献立には秋のイメージを盛り込んで見た目にも紅葉の季節を感じて頂
けたら嬉しいです。そして天醐のもう一つのこだわりとしては、「米油」です。
お客様に提供するお料理に使う油は 和え物、炒め物、ドレッシング、御飯等
すべて「米油」を使用しています。最近話題になっているようですが、オリーブ
オイル同様 脂肪酸の効果は人体に有用な働きをします。また米油独特の
成分による効果も今後は期待できるようです。いずれにしても「生活習慣病」の
予防となる事に間違いは無いでしょう。
今月の強肴は、あすか鍋です。牛乳をベースにして仕立て西京味噌と薄口醤油
で味を調えコーンの裏漉しでまろやかな味に出来上がりました。優しいお味で
秋の野菜達を鮭のしんじょうと共にお召し上がり下さい。
水物はチョコわらび餅です。前もっての御予約を頂ければ小売りも出来ますので
お気軽に御相談ください。
今月より「おせち料理」の御注文も承ります。詳しい内容は店員に申付け下さい。
野菜ソムリエ オーナーシェフ 大澤 淳
11月のお献立
今月のお献立
向附 長芋寄せの醤油あん スモークサーモン 柿 イクラ
椀盛 南瓜のしんじょ 生麩 焼き目舞茸 柚子
造り 季節魚のサラダ仕立て 胡麻と大根のドレッシング
林檎スライス 温度玉子 刻み野菜
八寸 ◆春菊と法菜の浸し 椎茸
◆豚肉の胡麻和え 栗の甘露煮
・変わり玉子焼き・しんじょ・うずら卵のゼリー寄せ
・秋刀魚の八幡巻き・海老の旨煮・海老春巻き・銀杏
・蓮根と紅芋のチップ 紅葉麩揚げ
煮物 馬鈴薯餅と鮭のしんじょの飛鳥鍋 晒し葱
ブロッコリ、人参、エリンギ、粟麩
御飯 大豆とひじきの炊き込みご飯
汁物 味噌汁(信州味噌) 葱 巻き麩
水物 チョコわらび餅 抹茶 黄な粉 小豆
薄茶
10月の能書き
天醐の十月
記録的な猛暑と残暑に見舞われた今年の夏もゆっくりと秋の気配を感じる最近。
ですが、この季節の変わり目は猛暑で疲れた体に追い打ちを掛けるように昼夜
の温度差が大きくなり身体に大変な負担となります。体調を崩さない為にも日頃の
食事が大切な要素となり、冷え込んでくるこれからの季節に備えての食事を天醐の
料理が少しでもお客様にお役に立ち、お手伝い出来れば幸いと存じます。
今月のお献立は、秋のイメージは勿論ですが「身体に優しい食事」がテーマです。
身体を温める野菜と乾燥肌対策、そして調理法を野菜ソムリエが御案内致します。
一般的に根菜類は身体を温めると言われます。大根・人参・牛蒡・芋類・生姜等
これからの季節の食卓には欠かせない食材。唐辛子や生姜は勿論、臭いの強い
ユリ科ネギ属のニラ・ニンニク・ラッキョウ、ネギは代表格。逆に身体を冷やす
野菜としては、夏に旬を迎えるトマト・茄子・胡瓜等々ですが、オリーブオイル
にニンニクや唐辛子を少量加えて加熱調理をする事で野菜の有効成分を充分に
引き出し重要な役割を持ちます。冷やす野菜と言われる葉菜のレタス類やセロリ
トマト等もサラダとして食べる場合はドレッシングに卸し生姜や山葵を加えると
身体を温める役割が。つまりは、食はバランス良く摂る事と食材に合った加熱を
する事で「身体に優しい食事」が頂けます。難しく考えない事がコツかも・・。
野菜に含まれるビタミンCやEは冷え症に効果があると言われビタミンEには
血行を良くし体内のホルモン分泌を調節する働きがあります。じゃが芋の豊富な
ビタミンCと南瓜のビタミンEは外せません。ビタミンCには血液の主要な材料
となる鉄分の吸収を促進、毛細血管の機能を保持する働きがあります。
冬野菜に限らずCやEを含む果物・穀物・豆類なども身体を温める食材です。
また、青背の魚であるマグロ・サンマやイワシに多く含まれるEPAやDHAは
血液をサラサラにする効果があり血液の流れが良くなり・・
つまりは血流・血行が良くなる事によって冷え症や乾燥肌の改善に
役立つと言えるでしょう。 そして水分の補給も大切。
お茶とかコーヒーとは別に水分を摂る事をお勧めします。お白湯か湯ざまし等で
一日数回に分けて。又、サプリメントやお薬を飲む時に少し多めに摂りましょう。
野菜ソムリエ オーナーシェフ 大澤 淳
10月のお献立
今月のお献立
向附 しめじと紅芋のムース 無花果 海老 胡麻ソース
椀盛 むかごと銀杏のしんじょ 生麩 焼き椎茸 柚子
造り 季節魚のサラダ仕立て 胡麻と大根のドレッシング
グレープF 温度玉子 刻み野菜
八寸 ◆鶉卵と枝豆のゼリー寄せ ◆ナメコと菊花のしんじょ
◆メープルトースト ◆林檎と胡桃・レーズンの白和え
◆玉子焼き ◆南瓜のムース ◆豚肉の胡麻和え
◆すずきの変わり揚げ ◆里芋・椎茸・がんもどき
煮物 鶏団子と白菜の豆乳鍋 粟麩 もやし
晒し葱 糸唐辛子
御飯 栗の焚き込み御飯
汁物 味噌汁(信州味噌) 葱 巻き麩
水物 チョコわらび餅 抹茶 黄な粉 小豆
薄茶