‘会席のお献立’
3月の能書き
天醐の三月
三月は気温の変動が激しく体にとって負担も大きい季節のひと月となります。
急に暖かくなったり寒くなったりと体調管理に気を抜けない時期でもあります。
野菜ソムリエとしては季節の野菜達を出来るだけ多く摂って頂き、栄養バランスの
良いお献立を心掛け、お客様に少しでも健康の為のアシストが出来ればと思います。
向附 この季節の定番、白魚と菜の花の組み合わせ。白魚はサッと湯通ししお出汁の
効いたゼリーで寄せて菜の花とほっき貝をトッピング。ミニアスパラと黄身酢での
味のバランスが萌え出る春の野を連想させる相性ものです。
椀盛 蓬を茹でてあく抜きしたものを擂り潰してすり身に混ぜ込み、しんじょに仕た
て蛤とおぼろ昆布を添えました。吸い口には桜の葉を一片。香り立つ蛤と
桜葉を楽しむ今の時期限定の逸品です。
造り 今月の一押しは鹿児島県屋久島周辺を回遊する走りの初ガツオ。
土佐にもどこにも負けないカツオの一級品。ただし、収穫量が少なく
なかなか入荷が困難。地元の業者と連絡を取りつつ航空便を待ちますが、
漁師曰く、天候と運次第・・との事
今月は近海物の何かのお魚がサラダ仕立てとなります。
八寸 日本料理30年の私ですが、その枠にとらわれないのが天醐流。大徳寺縁高
を洋風にアレンジ。縁高に収まる器を和から洋へ変えるだけでこれだけ変化
するとは・・。お客様にお出しするお料理に一品一品気合いが入ります。
内容は薄塩したアイナメにパン粉とみじん粉の2色の衣を付けて揚げたものに
彩りのトマトとフルーツマヨネーズソース。珍味入れには海老に厚焼き卵、
貝柱、空豆、梅肉に大根卸しを混ぜたドレッシングを掛け色彩を添えます。
煮物 おでんを洋風の一皿に。少量のバターと牛乳は使いますが味付けは西京味噌と
薄口醤油、味醂、そして鰹だし。スープを味わって頂くとともに西京味噌と牛乳の
相性の良さも感じていただけたら・・と。
御飯 先月に引き続きセリと三つ葉のお雑炊。玉子とじとして梅肉を添える事で
あっさりとそして柔らかな味に調いました。
※ 夜懐石の一品を御紹介 ◎和牛ホホ肉の煮込み季節野菜添え玉子味噌のソース。
すっぽん料理と同じく酒と水の同量で柔らかくなるまで煮込み葱と生姜の香りを
添えます。とろとろのほほ肉にはコラーゲンたっぷりで舌触りも絶妙!
お昼会席でも御予約にて用意いたします。
野菜ソムリエ オーナーシェフ 大澤 淳
3月のお献立
今月のお献立
向附
白魚のゼリー寄せ 菜の花 ほっき貝 ミニアスパラ
黄身酢掛け 花弁大根
椀盛
蓬しんじょ 蛤 桜麩 乃し餅 おぼろ昆布 桜葉
造り
季節魚のサラダ仕立て 玉葱ドレッシング
大根 貝割 赤玉葱 人参 水菜 大葉
八寸
・カクテルグラス アイナメの二色揚げ ミニトマト
チャービル フルーツマヨネーズ
・珍味グラス 海老 空豆 玉子 貝柱 梅と大根のソース
・出汁巻き玉子 京揚げしんじょ 桜海老カステラ 錦糸巻
・三色団子 鱒の柚庵焼き 穴子、椎茸、牛蒡の飯蒸し
煮物
洋風おでん 大根 人参 がんも 鶏つくね 鶉卵
ブロッコリー 小口葱
御飯 セリと三つ葉の雑炊玉子とじ 梅肉
香の物 五種
水物 チョコレートムース 苺 その他 ホイップ ミント
薄茶
2月の能書き
天醐の二月
こよみの大寒を過ぎた頃からの厳しい寒さを身に滲みて感じながら、日差しの暖かくなる春を待ち遠しく感じる今どき、春の食材や温かい料理が恋しくなります。そんな春の萌え色を楽しんで頂きたく今月もお献立を。
向附
旬のカリフラワーと貝柱をムース仕立てに。少量のお出汁と調味料でミキサーにかけ、
まとめる程度のゼラチンで固めます。出来るだけ 水分を抑えて素材の旨みを
引立てます。若竹に追鰹をして炊いたものとアスパラを添えて 、お出汁にビーツの
ピューレを混ぜたソースを彩りに。またカリフラワーの持つ成分ビタミンCは加熱に強く、
抗酸化作用も期待できそうです。
椀盛
白魚をしんじょうに。柔らかな味の白魚とこれからが旬の蛤の
相性は格別。添え物にはちょっとした苦みが美味しい
菜の花と吸い口には、走りの木の芽。
造り
今月のお刺身は生のキハダ鮪。もっちりした食感がサラダ仕立ての
定番です。刻んだ野菜達と一緒に召し上がって頂くのは
天醐オリジナルの玉葱ドレッシング。
八寸
毎月の試行錯誤。正直悩みます。八寸の本来の意味は茶懐石の器。
杉木地の八寸角(24㎝)の器から来ています。海の物・山の物
或いは 動物性・植物性と言った具合です。
茶事の席で亭主がお客様とお酒を交える料理でもあります。
季節の珍味や野菜、魚貝などで味の濃い物薄い物、辛い物甘い物
と何でもありの料理なのですが、味の強弱のバランスや見た目の
景色などを取る為にひときわ料理人が神経を使う料理かも 知れませんね。
強肴
煮物と揚物を合わせた料理。白菜と豚挽肉を重ねて蒸したものと
今市カブの炊いたもの。そして海老とホワイトソースを餃子の皮で
包んで揚げたものにほうれん草のソース。このソースには一工夫して
お餅でとろみが付けてありますお餅をお出汁で焚いて
ミキサーにかけた ほうれん草と合わせてソースとし、
付け合わせに揚げたての海老煎。とろみのソースと揚げたて
パリパリが高相性!
御飯
三つ葉とセリの入ったお粥風雑炊に葛餡を掛けて山葵を添えます。
少しでも先取りの春を感じて頂けたら幸いです。
※夜懐石の一品を御紹介
◎和牛ホホ肉の煮込み季節野菜添え西京味噌と柚子の香
すっぽん料理と同じく酒と水の同量で柔らかくなるまで
煮込み葱と生姜の香りを添えます。とろとろのほほ肉には
コラーゲンたっぷりで舌触りも絶妙!
お昼会席でも御予約にて用意いたします。
野菜ソムリエ オーナーシェフ 大澤 淳
2月のお献立
向附
カリフラワーと貝柱のムース 若竹の子 アスパラ
ビーツのソース 蕗の薹 イクラ
椀盛
白魚しんじょ 梅麩 木の芽 小蛤 菜の花
造り
生キハダのサラダ仕立て 玉葱ドレッシング
大根 貝割 赤玉葱 人参 水菜 大葉
八寸
・珍味器二種 春菊と蟹身の和え物 穴子の飯蒸し
・京揚げしんじょ ブロッコリゼリーの胡麻酢掛け
・温玉と海老旨煮のフルーツマヨネーズ
・プチシュー海老 変わり玉子焼き 豆乳豆腐
強肴
海老餃子 白菜と豚挽肉の重ね蒸し 小蕪 ミニトマト
ほうれん草のソース 針葱
御飯
セリと三つ葉の雑炊 餡 山葵
香の物
五種
水物
ヨーグルトムースと梔子のゼリー 五色豆
薄茶
1月のお献立
今月のお献立
向附 胡麻豆腐 卵黄醤油漬け イクラ 旨出汁
椀盛 海老しんじょ 梅麩 柚子 伸し餅 菜の花
造り はまちのサラダ仕立て 玉葱ドレッシング
大根 貝割 赤玉葱 人参 水菜 大葉
八寸 ・珍味 ・串打ち肴六種
海老、奉書巻き、海老丸、鶏丸、松風 他
・ 温物 出汁巻き、若竹、海老団子、里芋、青身
・ 蒸物 野菜しゅうまい 霙あん掛け 木の芽
焼物 サーモンの素焼き
蕪、人参、エリンギ、法菜、白葱 イタパセ
御飯 湯葉と三つ葉の雑炊 山葵
香の物 五種
水物 ヨーグルトムースと梔子のゼリー キウイ・苺
薄茶
12月の能書き
天醐の十二月
日ごとに寒さが厳しくなるこの時期、季節の変わり目と言う事もあり体調を崩しやすくなります。
体の中から温めてくれるこの頃のお料理は御馳走ですね。
天醐では出来るだけ、出来たて熱々、又は冷たい物は冷たく・・を心掛けております。
お料理のタイミングによってはお時間を頂く場合もございます。
今月の向附には季節の素材は勿論、体調管理のヒントになる食材でのお献立。
かぶとリンゴのコンポート、実は少量の甘酢と一緒に真空パックします。
真空パックすることにより素材の美味しさと栄養分を逃さず提供できます。
ビタミンCや食物繊維が多く整腸作用が期待できるリンゴ。かぶにはビタミンB・C、アミラーゼ等、
有用な栄養が無駄なく利用できます。また、その栄養分が抽出されたゼリーを添えます。
次に完熟柿のしんじょ。柿にはビタミンA・C高血圧予防にも効果が・・。
そんな完熟柿を柔らかくしんじょに仕立てます。
ヨーグルトには整腸作用や免疫力を高め、毎日の食卓に欠かせないご家庭もあると思います。
明太子の辛みを加え、黄身酢が味をまとめます。
お椀盛には蟹の身をほぐし混ぜ込んだ、ずわい蟹のしんじょ。絞り生姜が体を温め、
一片の柚子が香り、続くお料理に食欲を湧かせます。
お造り。数種の刻み野菜とはまちのサラダ仕立て。定番の玉葱ドレッシングと
人参ソースで召し上がって頂きます。玉葱にはビタミンB1の吸収を良くする硫化アリルを含み
、スタミナ食、強壮食として古くから利用され、人参はカロテンをたっぷり含んだ緑黄色野菜。
脂溶性栄養素なので油を使っての調理やソース作りは理にかなっています。
動物性、植物性食品をバランスよく頂ける逸品です。
八寸。3皿とも温かいお料理。煮物には、なんとなく『ホッ』とする信田巻や里芋など。
じゃが芋を蒸して裏漉し鶏そぼろを射こんだ 芋饅頭。
出汁巻きには、大根卸を混ぜ込んだ餡をかけ青味と刻み葱を添えます。
煮物。冬場に出回る甘みの強い寒玉キャベツで挽肉を包んだロールキャベツを
豆乳鍋に。付け合わせには豆乳を葛で練り込んだ豆腐と香りだしにベーコンを。
御飯。野菜ときのこの雑炊に三つ葉が香り、塩炒り胡麻が味をまとめます。
水物。小倉のあんをゼリーで寄せて甘みを抑えたココアムースの二層に。
苺とバナナのトッピングに胡桃の甘露煮。香りはミント
野菜ソムリエ オーナーシェフ 大澤 淳
12月のお献立
向附
かぶとリンゴのコンポート 海老 リンゴ酢ジュレ
完熟柿しんじょ サーモン トマト 胡瓜 南瓜ソース
明太子とヨーグルトのゼリー 黄身酢 ラレシ
椀盛
蟹しんじょ 紅葉麩 柚子 伸し餅 絞り生姜
造り
はまちのサラダ仕立て 玉葱ドレッシング 人参ソース
大根 貝割 赤玉葱 人参 水菜 大葉
八寸
・野菜信田巻 六方芋 海老団子 椎茸 いんげん
・馬鈴薯饅頭 鶏そぼろ射込み 天つゆ
・出汁巻き みぞれ餡かけ 法菜 小口葱
煮物
ロールキャベツの豆乳鍋 晒し葱
豆乳葛豆腐 ベーコン ブナピー
御飯
野菜雑炊 人参 なめこ 榎 三つ葉 塩入り胡麻
香の物
五種
水物
小倉ゼリーとココアムース バナナ 苺 ホイップ
薄茶
11月の能書き
天醐の十一月
今月の向附はちょっと洋風な一皿。
洋皿に季節の野菜と魚を彩りよく盛り、秋のイメージを
少しでも感じて頂けたら・・と。
白和えは豆腐を水切りし裏漉しの後、ゴマクリームと合わせて
醤油と酒、味醂で調味。柿と林檎をサイコロに切って合わせます。
彩りにクコの実が冴えます。
もって菊(もってのほかと言う意味)の紫色を混ぜ込んでゼリーで
寄せた 長芋とつくね芋の寄物。
南瓜と薩摩芋を蒸してそれぞれミキサーにかけて二層のゼリー。
いずれも秋の素材の定番。見た目は洋風ですが、全て鰹出汁と
和の調味料での味付け。まぎれもなく日本料理。
天醐では、そんな遊び心のあるお料理をお客様に
楽しんで頂きたく毎月のお献立を立てます。季節ごとの素材や
器の移り変わりも日本料理の楽しみの一つですね。
お椀盛 お椀盛にはみぞれ仕立てのしんじょう椀。
葛粉でとろみを付けて冷めにくく体も温まる一品。
あしらいには強火で炙ったシメジを一かけと柚子が香ります。
お造り お造りには、名残りの鰹。
焼き目を入れて香ばしく、そしてタマネギドレッシングと針葱の
香味野菜との相性は抜群です。定番のサラダ仕立てですが、野菜の
数はなんと 十一種類 大根、人参、赤玉葱、桃蕪、水菜、玉葱、
ラディシュ、白葱(牛蒡、椎茸) 紫蘇の葉。
少量ずつですが動物性と一緒に摂取すると効率的です。
八寸 八寸には 里芋、蓮根、南瓜、干し柿など今、
これからが旬になる野菜も色々。
本来の八寸の意味は 八寸(24センチ)角の杉木地盆に海の物・
山の物 あるいは植物性・動物性の料理を盛ったお酒のあてと
いったものです。
お酒は飲まずとも季節感が第一の八寸。
味わって頂きながら次のお料理に期待します。
焼物 肌寒くなるこの頃ではやっぱり熱々が一番。
和牛の生姜煮と季節の根菜を一緒にスフレ皿に入れパイ生地で
蓋をしてオーブンで焼き上げます。
御飯 うずみ豆腐。柔らか御飯と豆腐の白味噌仕立ての汁かけ飯。
寒くなるこれからの時期には体に滲みる変わり種御飯です。
水物 さっぱりとしたぜんざいをゼリー仕立てにし、
バニラビーンズの効いたアイスと林檎のコンポート
、 バナナをトッピングに。香りはミント。
野菜ソムリエ オーナーシェフ 大澤 淳
11月のお献立
今月のお献立
向附 長芋寄せ 旨出汁餡 サーモン旨酢ジュレ掛け
南瓜と薩摩芋のゼリー 黄身ソース より人参
柿と林檎の白和え クコの実 サラダ法連草
椀盛 なめこしんじょ しめじ 紅葉麩 柚子 みぞれ仕立て
造り 焼き目鰹のサラダ仕立て 玉葱ドレッシング 針葱
大根 貝割 赤玉葱 人参 ラディッシュ
八寸 ・口取り肴 玉子焼き 昆布巻き むかごしんじょ
海老の旨煮 干し柿マンゴ
・煮物 里芋 がんもどき 南瓜 粟麩
・揚物 蓮餅 鶏丸 舞茸天婦羅 天出汁
・馬鈴薯チップ さつま芋チップ
煮物 和牛生姜煮と野菜のパイ包み焼き
ペコロス・人参・玉蕪・白玉
御飯 うずみ豆腐白味噌仕立て 芥子・葱 香の物五種
水物 ぜんざいゼリー 林檎 栗甘露 バナナ ホイップ
薄茶
十月の能書き
天醐の十月
十月に入ってやっと朝夕の涼しさが感じられ過ごしやすくなりましたがまだまだ
日中の日差しの強さに秋への装いや日々の生活にも戸惑いが続く今日ですが、
九月から十月にかけての温度差は体調にも負担を掛ける事が多いようです。
食生活においても夏の料理から冬の料理へと極端に切り替わる時期でもあります。
天醐では野菜を中心として季節の旬野菜は勿論、お客様の体調にも負担を
掛けないよう献立を致します。寒くなるにつれて体を冷やす野菜から温める野菜へ、
そして体を温める調理法へ。野菜ソムリエとして野菜を知り、お客様に健康のための
料理の提供を心掛けております。ご家庭での参考にして頂ければ幸いです。
【体を温める野菜】としては冬野菜の代表格 白菜、大根、蕪、牛蒡、ネギ等々。
生姜や唐辛子なども薬味として利用するのは効果的。お鍋の薬味は必然的なのです。
主役は魚介や肉類なのですが体を温めつつ消化を助けビタミンCやEを含む野菜達の
役割はかなり大きいようです。バランス良く野菜を摂りましょう。
天醐での《玉葱ドレッシング》には大きな意味があります。勿論、【体を温める野菜】
のユリ科ネギ属のタマネギですが、ネギ・ニラ・ニンニクともに同じ効果が期待できます。
慢性疲労や筋肉疲労に効果的で、ビタミンB1の吸収を高め、血液サラサラ
効果が、動脈硬化や高血圧の予防にもつながります。有難いことにこの効果は加熱
しても期待できるようです。家庭では身近で脇役的野菜ですが私達の健康には貢献
してくれているようです。当店で肉や魚と共に提供する場面が多い理由はここにあるのです。
塩分を減らし、美味しく体に優しい料理の提案の一つです。
紅葉の時期はもう少し日にちが掛かりそうですがお献立は早めの秋へと変わりつつ
あります。今月もバランス良く食材を活用させて頂いております。ご満足頂ける様
今後とも精進いたしてまいります。
野菜ソムリエ オーナーシェフ 大澤 淳