5月の能書き

2012-05-10

                天醐の五月

向附 

 今が旬のうすい豆(豌豆豆)主成分はタンパク質と糖質。ビタミンBやCも

 比較的多く含み、沢山のうすい豆が入手出来たら早目に茹でてポリ袋に入れ

 冷凍しておくと混ぜご飯や和え物、卵とじ等活用範囲が広がります。

 そんなうすい豆を今月は裏ごししゼリーで寄せました。共にゼリーで寄せた湯葉。

 柔らかい食感と滑らかな口当たりの湯葉も元は大豆。同じ豆どうしですから相性

 も悪かろう筈がありません。ほんのり酸味の効いた黄身酢と茗荷の香りでどうぞ。

椀盛 

 今月はパプリカのしんじょ。ピーマンと近い種類ですが味は甘く癖も少なく

 食べやすい野菜です。パプリカの特徴は多量に含まれるカロテンとビタミンBⅠ

 Cが豊富。Cはトマトの5倍、レモンの2倍と言われます。赤・黄・オレンジ

 紫・白・・等色々ありますが、それぞれ栄養成分も違うようです。

 しんじょの前盛りには若布と香りと食感を楽しんで頂く蕗。吸い口には木の芽。

造り 

 先月に引き続きお野菜たっぷりのサラダ仕立て。当店では野菜が主役がちに

 なってしまいますが、あえて食事に野菜達を多く取り入れる事と、美味しく食

 する事を提唱いたします。私自身、刺身のツマは大根の千切りと紫蘇の葉が定番

 なのが不思議でなりませんでした。刺身のツマ達はそれぞれ役割があります。

 消化を促したり殺菌作用、臭みを消したり・・・。でも、醤油だけで野菜は美味

 しくありません。野菜達を魚と一緒に美味しく召し上がって頂くための献立です。

 八寸 

  今月の八寸のコンセプトは《滋味》見た目に派手ではありませんが、旬の

  食材と身体が欲しがる内容をお料理にしました。例えば、分葱のぬた。昔は近所

  の池や田で獲った田螺を分葱と酢味噌で食べたり、山で採ったゼンマイをむしろ

  の上で揉みながら干して煮物にしたり、採れたての新じゃがを蒸すだけて塩を

  振って食べたり・・。栄養学的に見ると季節的に必要な栄養素を必然的に摂って

  いたのです。今では食が豊かになりすぎ《季節が与えてくれる食材の恩恵》を

  忘れてしまいがちです。ご家庭でもちょっとした工夫で滋味を楽しめると思います。

 煮物 

  海老をすり身にして裏漉した豆腐と混ぜて蒸し上げ衣揚げにしました。

  手間の掛る一品ですが、野菜餡との相性も良くすんなりと喉を通る煮物に

  仕上げました。卸し生姜が味を引き締め、揚げ物の重さを感じないお料理です。

 御飯 

  変わり種御飯。豚肉を生姜で焚いた時雨煮。そのまま召し上がっても、

  またお吸い物を御飯にかけてお茶漬けにしてもお好みでどうぞ!

※ 夜懐石の一品を御紹介 ◎和牛ホホ肉の煮込み季節野菜添え玉子味噌のソース。

 すっぽん料理と同じく酒と水の同量で柔らかくなるまで煮込み葱と生姜の香りを

 添えます。とろとろのほほ肉にはコラーゲンたっぷりで舌触りも絶妙!

            

       野菜ソムリエ オーナーシェフ   大澤 淳